師匠のゼミナール「日本教育史ゼミ」は、どの年度の時間割でも、必ず金曜日の最終講時に組まれていました。
ある日のゼミの実況中継です。
「杉浦!質問、無いんか?」
「ありません。」
「質問無いって、どういうこっちゃ?まじめに勉強してんのか?」
「はい。」
「ウソつくな。質問出てきぃひん勉強があるかいな。質問するまで、帰らんでエエ。」
こりゃあ、エライコッチャと、取って付けたような、無理やりひねくりだしたような、およそ秒殺されるような質問ばかりしていたように記憶しております。
そうです。師匠の最終講時は、まさにエンドレスだったのです。
そんな怠慢学生だった私ですが、一度だけ烈火のごとく質問したことがあります。
何かの拍子に、師匠がこんなフレーズを口にされたのです。「我が国に唯一社会主義革命の可能性があった1970年代前半」。
私はこのフレーズに噛みつきました。「先生に質問があります!1970年代前半も含めて、そもそも我が国に社会主義革命が起きていないのは何故ですか?」
「杉浦君に謹んで回答します。それはな、お前らが権力相手に闘わんと、くだらん内ゲバばっか、やらかしとるからじゃ。お前らブント(註:共産主義者同盟のことです)だけでも、いったい何派に分かれとんねん。少しは反省せい!」
師匠に「負けた」と実感させられました。いよいよまじめに勉強しようと思い始めた瞬間でした。
(続く…)