街宣車(…といいますと、イカツ過ぎるかもしれません)、かまびすしい昨今です。
「男」も熱心な政治活動をしていました。張り切って選挙スタッフをやりに行っていたものです。
仕事帰りに車で寄り道しては、「支持者発掘」に余念がありませんでした。
「今日はどこまで?」と聞きますと、うれしそうに返答が返ってきました。
「断層があって、山があって、山超えた尾根づたいの××寺」。
「…って、断層の向こうに車停めて、あとはケモノ道?」
「うん。卵、投げつけられた。ウチは△△党じゃ!帰れ!って」。
卵や△△党はともかく、××寺に住職がいたことが驚きでした。無住の荒寺とばかり思っていました。
「男」の政治活動って、こんなものでしたが、通いつめている間に仲良くなって、支持者名簿に名前が書き連ねられていくのも、不思議なものでした。
「男」は最後の選挙を戦ったあと、帰らぬ人となりました。分厚い名簿が残りました。
「男」の奥さんは、名簿を今でも大事にどこかに隠しています。
「急ごしらえの名刺に、選挙参謀とか書いてある人には、絶対に見せません」だそうです(笑)。
一度だけこっそり見せてもらった名簿には、理想に殉じた「男」の手垢が染みついていました。
小生は、まっすぐで一徹だった「男」が大好きでした。最後の戦いも小雪まじりの師走だったと記憶しています。