不定期冬講日記(その16)

毎日個人的に、日報をつけています。

授業中あったことから、深く思い出に残りそうなこと、すぐに忘れてしまいそうなこと、笑ったこと、怒ったこと、ほめたこと、叱ったこと…、思いつくままに、打ち込んでいます。

パソコンを使い続けて、もう二十年。衰えていく記憶力を、ITが補ってくれます。

どんな小さな記事にも、関係ありそうなタグを埋め込んでおきます。忘れてしまったことも、タグを手掛かりに遡って抽出できます。

小生、勉強を教え始めて39年になります。「うまくいった」とか「喜び」とか、そんなタグが増えていくのは、きっと年の功でしょう。

「しまった!」とか「要反省!」とか、そんなタグがほとんど減らないのは、まだまだ若造の証左だと自戒しています。

一年に一度だけ、あらゆる記事に、ただ一種類だけのタグをつける日があります。

中学入試統一日の前日、「明日は全員合格!」。

今年度もおもいきりこのタグをつける日を楽しみに、がんばろうと思っています。

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不定期冬講日記(その15)

入試が近づいてきました。

親御さん、ご心配はごもっともです、しかし過保護はいけません。

受験生が自分でやるべきことを、代わりにやってあげるとか、浮いた時間で勉強時間を確保とか、論外です。

なぜか?…といいますと、子供たちは一度経験した入試の在り様を、のちの人生に何度も再現する…経験的に、かなり正しく、そうだと言い切れるからです。

中学入試と同じように、高校入試を迎え、大学入試を迎え、入社試験に挑み、昇進試験を受け…、さて、親御さん、いつまで長生きできますでしょうか(笑)。

ですから、過保護はダメです。

「歴史は、二度繰り返す。一度目は悲劇として。しかし二度目は茶番として。」

(カール・マルクス『ルイ・ボナパルトのブリュメール十八日』)

悲劇をあらかじめ予測し、用意周到に避けられるからこそ、人は賢いのです。

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不定期冬講日記(その14)

週に一度の休講日。毎週日曜に設定しています。

「師走」だからなのか、「師走」であるべきだからなのか、寒いなかジッとしていればよいものを、あれこれ歩き回ってしまいます。

奈良マラソン、帰路、登大路交差点にて。猛然と走ってきたランナーが叫びました。

「うを~!練習不足じゃい!来年こそ、やったるわい!」。

志や、善し!思わず、ハイタッチで激励しました。

真冬の衆院選、小選挙区に敗北、比例復活当選の若者。

「働ける機会を与えていただき、ありがとうございました」。

選挙といえば、もう十数年前。急死した親父さんの弔い合戦に担ぎ出された息子。

「親父の小選挙区を守り抜く。親父の理想実現のためには、敵に一議席たりとも渡しはしない!」

すばらしい若者たちを見るにつけ、この国もまだまだ捨てたモノじゃないと思えます。

若者たちに感謝します。

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不定期冬講日記(その13)

同志であり同僚であった男が、まだ教育業界にいると知って数年経ちました。

小生は塾屋、彼も塾屋、ただし元塾屋です。彼は現在、某有名中高一貫校の看板教師です。

涙もろい男でした。合否危ない生徒が入試に通ったと言って泣き、生徒が卒業してしまうと言って泣き…なんだかいつも泣いていました。

授業が終わって後片付け、さあ帰ろうとしたら、講師室の奥のロッカーの隅で泣いていました。

「○○先生、どうされたんですか?」と聞きますと、真っ赤に泣きはらした目で、小さな声で、「生徒が…、宿題が…」とポツリポツリ、ボソボソと話し始めました。

「宿題、やってきぃひん生徒がいるんですね。そんなん、私の教室に放り込んでください。宿題の何たるか、わからせたりますわ、はははぁ~!」

「いや…、ちがうんです。…やってきたんです」。

「じゃあ、なんで泣いてはるんですか?」

「うれしくて…。なんぼ叱ってもだめで、授業後に残しても逃げ帰り…。そんな生徒が、心を入れかえて…、もう、うれしくて…」。

繊細な男でした。生徒の気持ちに一番敏感な、すばらしい男でした。

彼もまだまだ、老いぼれるつもりはないと思います。小生も負けずに頑張ります。

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不定期冬講日記(その12)

「劇的」な合格!…ではなかったのでしょう。むしろ地味目だったと思います。

三年前、決してあきらめない受験生がいました。

模試の判定が良かったわけではありません。むしろ悪かったです。

人並み外れた体力があったわけでもありません。むしろなかったです。

しかし決してあきらめない受験生でした。

受験前日、夕刻に登場した彼は、自分自身にビンタ数発、「気合いを入れ」てから始めました。

睡魔と闘うために、椅子を取って膝立ちになりました。

それでもしつこい睡魔を覆滅すべく、なんと机の上に正座して勉強しました。

しばらくして叫び声が聞こえました。

「うぉ~!ををををぉ~!」

叫び声を残して、彼は机から落下しました。

「大丈夫か?」と覗き込まれても、ひょうひょうとしておりました。

「睡魔に勝ちました!がんばります!」

また猛然と勉強しました。

彼は今、奈良県下最難関の六年一貫校に通っています。

きっと今も、あの頃のように、自分に厳しく、妥協なく、まっしぐらに歩んでいることと信じています。

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不定期冬講日記(その11)

彼は困っていました。

「過去問、解いてみたんですけど、1割2分くらい(合格最低点に)足りないんです。きれいにどの教科もです。(僕は)実力が無いのでしょうか?」。

小生は言いました。

「実力=得点だろうか?過去問に慣れること、これに実力を加味して得点だと思うが、いかがだろう?過去問を始めたのはいつだい?」

彼は答えました。

「最近です。模試も含めて、過去問に触れる機会が、今まであまりなかったです」

小生は諭しました。

「入試問題を出題する側は、得点で実力を測りたいと思っている。模試を出題する側も、同じだね。しかし出題される側も、だんだん学習してくる。得点を取ることで、実力をアピールしたい。できうるなら、実力を上回る得点を稼ぎ出せれば、それも実力と見なされるに違いない。それには出題に慣れるしかない。そう考えて秘かに過去問を解いている人たちが、たくさんいるのだよ。」

「今からでも遅くない。今期の出題が予測できるほどに、過去問をやりこなしたまえ。君の実力をじゅうにぶんにアピールできる時が来るからね。」

入試には時として、隠されたテクニックを知るように促されます。テクニックに走り、おぼれ、自滅することは愚かの骨頂ですが、必要悪を行使することは、むしろ不可避なことではないでしょうか。

あまつさえその必要悪に、なんらかの動かさざる真理があり、隠された事実があるのなら、むしろ積極的に白日の下にさらし、闘いの刃に資することが、必要悪にとっても本懐…そう考えています。

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不定期冬講日記(その11)

彼は困っていました。

「過去問、解いてみたんですけど、1割2分くらい(合格最低点に)足りないんです。きれいにどの教科もです。(僕は)実力が無いのでしょうか?」。

小生は言いました。

「実力=得点だろうか?過去問に慣れること、これに実力を加味して得点だと思うが、いかがだろう?過去問を始めたのはいつだい?」

彼は答えました。

「最近です。模試も含めて、過去問に触れる機会が、今まであまりなかったです」

小生は諭しました。

「入試問題を出題する側は、得点で実力を測りたいと思っている。模試を出題する側も、同じだね。しかし出題される側も、だんだん学習してくる。得点を取ることで、実力をアピールしたい。できうるなら、実力を上回る得点を稼ぎ出せれば、それも実力と見なされるに違いない。それには出題に慣れるしかない。そう考えて秘かに過去問を解いている人たちが、たくさんいるのだよ。」

「今からでも遅くない。今期の出題が予測できるほどに、過去問をやりこなしたまえ。君の実力をじゅうにぶんにアピールできる時が来るからね。」

入試には時として、隠されたテクニックを知るように促されます。テクニックに走り、おぼれ、自滅することは愚かの骨頂ですが、必要悪を行使することは、むしろ不可避なことではないでしょうか。

あまつさえその必要悪に、なんらかの動かさざる真理があり、隠された事実があるのなら、むしろ積極的に白日の下にさらし、闘いの刃に資することが、必要悪にとっても本懐…そう考えています。

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不定期冬講日記(その10)

授業中ちょっとした雑談が、深く核心をつくことがあります。

最近では「0点をめぐるあれこれ」、こんな話題がありました。

「100点取るのは難しいけど、0点取るのは簡単ですよね」、ポロリともらした生徒がいました。

「…?。ホントにそうだろうか?確かに白紙の0点なら簡単に取れるね。人生の無駄遣いを厭わなければね。」

「デタラメに書いても、0点取れるとは限らないね。記号選択や自由記述がほとんどない教科、たとえば算数なら取りやすいかもしれない。」

「しかし特に他教科、記号選択がほとんど四択だと仮定して、ほとんどデタラメに書いても25%は正解してしまう確率だよね。」

「算数にしても、デタラメな数字が、たまたま正解にヒットしてしまわないとも限らない。」

「大事なことだ。よく聞いときなよ。がんばって0点取るためには、正解を丹念に外す学力が必要なんだ。もしかすると、100点取る以上に難しいことかもしれないよ。」

「ふ~ん、0点取るのが難しいなんて、思ってもみなかったよ。」

変な結論ですけど、「学力」の本質を、一面言い当てていると思うのです。

生徒たちは塾に来ることによって、学校だけで勉強しているんじゃないことを知ります。今回は、教材がテキストや問題集だけじゃないことを知りました。

貴重な経験でしたね。

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不定期冬講日記(その9)

不健康自慢というわけではないでしょうが…。

冬期講習が始まり勉強漬けになって、しばしばお聞きするお悩みがあります。「頭痛、腰痛、肩こり」と。

小生も頭痛を患うことは稀でしたが、「腰痛、肩こり」にはずいぶん悩まされてきましたから、惻隠の情を禁じえません。

特に腰痛は強烈で、いわゆるギックリ腰レベルのものが、1年に数回襲ってきました。

鎮痛消炎剤やら筋肉弛緩剤やら、いろいろ試してみたのですが、しょせん対症療法と判るのに、それほど時間を要しませんでした。

そこで小生が編み出した解決法です。

病因は「仕事・趣味を分かたずに、ずっと椅子に座り続けて、難しいことをしゃべったり読んだり書いたりし続けていること」と看破し、これと真逆の時間を必ずつくること…こう決めました。

具体的には出勤時間に余裕のある平日、毎朝ウォーキング90分、出張のない日曜、山辺道(桜井→天理)くらいを歩き切ると決めました。

不思議なことに腰痛がほとんど消えて、たまにチクッとする程度になりました。肩こりも腕をグルグル10回まわすと気にならなくなる程度です。

深刻そうな不健康でも、ちょっとした心がけとほんの少しの実行力で、好転することがあると思います。

薬頼みや神頼みの前に、試してみてください。

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不定期冬講日記(その8)

街宣車(…といいますと、イカツ過ぎるかもしれません)、かまびすしい昨今です。

「男」も熱心な政治活動をしていました。張り切って選挙スタッフをやりに行っていたものです。

仕事帰りに車で寄り道しては、「支持者発掘」に余念がありませんでした。

「今日はどこまで?」と聞きますと、うれしそうに返答が返ってきました。

「断層があって、山があって、山超えた尾根づたいの××寺」。

「…って、断層の向こうに車停めて、あとはケモノ道?」

「うん。卵、投げつけられた。ウチは△△党じゃ!帰れ!って」。

卵や△△党はともかく、××寺に住職がいたことが驚きでした。無住の荒寺とばかり思っていました。

「男」の政治活動って、こんなものでしたが、通いつめている間に仲良くなって、支持者名簿に名前が書き連ねられていくのも、不思議なものでした。

「男」は最後の選挙を戦ったあと、帰らぬ人となりました。分厚い名簿が残りました。

「男」の奥さんは、名簿を今でも大事にどこかに隠しています。

「急ごしらえの名刺に、選挙参謀とか書いてある人には、絶対に見せません」だそうです(笑)。

一度だけこっそり見せてもらった名簿には、理想に殉じた「男」の手垢が染みついていました。

小生は、まっすぐで一徹だった「男」が大好きでした。最後の戦いも小雪まじりの師走だったと記憶しています。

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