怪電話(結)-冬講日記(37)

「バリウム検査で胃に影が映りました。精密検査に行ってきますので、今回の話は無かったことにしてください」。

ヘッドハンター氏に、彼は最終通達しました。しきりに心配するハンター氏。彼はもうひとつだけ、秘かに不審に思っていたことを調べてみたくなりました。

「ご心配ありがとうございます、S田さん!、あの時も、今回も」。

彼は二十数年前に辞した職場で、最後まで面倒を見てもらった「S田」氏に、ハンター氏の声色がそっくりだと気づいていたのです。

「ふふふ、お人違いじゃないですか?、××さん!」。

そう言い終わるが早いか、ハンター氏の電話が切れました。笑い声まで「S田」氏にそっくりでした。

翌日彼は、やはり気になって、ハンター氏が指定した5つの電話番号を呼び出そうとしてみました。

「お客さまのおかけになった番号は、現在使われておりません」。

すべてつながらなくなっていました。音声案内が空しく響いていただけでした。

後日談。彼からあらましを聞いた者の7割が、「ものは試しに契約交渉してみたらよかったのに」と言ったそうです。

小生には、彼が交渉してみなければわからないほど、鈍感だと思えません。

3割が「ヘッドハンティング詐欺だろ。狙われてるで、気ぃつけや」だったそうです。

これまた小生には、とっくの昔に彼が認識済みと考えます。

彼は黙して語りませんが、何かと彼の身辺騒がしかった時期に、存亡危急の情報を伝えてくれた「S田」氏、懐かしくて、ありがたくて、決して無下にはできなかった彼だったのだろうと思います。

彼はそういう、義理人情に厚い奴です。

石川数学塾大阪
学園前教室・杉浦

受験生の皆さんへ、御健闘を祈ります

本年も宜しくお願いいたします。

暖冬だと言われていますが、皆さん体調など崩されていないでしょうか?

今週末からは大学受験生はセンター試験、中学受験生は統一入試等、
いよいよ受験が本格化します。

これからの数日は、今まで用いた教材、模試など自分の出来なかった箇所に取り組み、
一度あたったことのある様な問題は、二度と間違わないつもりで最終確認に励んで下さいね。

「もっと早くから勉強始めれば良かった・・・。」
「あの問題集、まだ1周しかやってない(最後までやってない)・・・。」
といった悔いが無い、全力を出し切った受験であれば良いですね。

皆さんの御健闘をお祈りします。

高の原教室 飯尾

怪電話(転)-冬講日記(36)

何度かヘッドハンターとやり取りするうちに、彼は違和感の原因に思い当たりました。

ハンター氏の背後を飛び交うオフィス会話に疑念が生じました。

録音して何度か聞いているうちに、背景音が全く同じ会話という瞬間を捕えたのです。

たとえば、こんな具合です。

低い男の声「またとない条件ですよ。今決めちゃいましょうよ」

やや高い男の声「お世話になっております。××転職サービスです。今よろしいですか」

女の声「19時20分に、アポイントをお取りしました」

別の女の声「夕方までにFAXいただけますか。お待ちしております」

これらがタイミング良く、寸分違わずに、何度も輻輳するなどという偶然が、はたしてあるものなのでしょうか。

ハンター氏の背後に、あわただしいオフィスと思わせる何らかの仕組み、たとえば録音テープが流されているとしたら…?

彼はこれ以上深入りするのを避けようと決心しました。

石川数学塾大阪
学園前教室・杉浦

怪電話(承)-冬講日記(35)

奇妙な電話でヘッドハンターに誘われた彼は、直感的に不思議なものを感じたようです。

即座に断るつもりでしたが、電話受けるからずっと感じていた違和感の原因を知りたくもあり、断るつもりもないが即答できることでもないと伝えて、電話を切りました。

彼は冷静でした。

社長と同僚全員に連絡を取って、しばらく探ってみることにするので同意してほしいと伝えました。

もちろんハンティングされるつもりはないと、つけ加えることを忘れませんでした。

彼の妻は珍しく心配していたそうですが、彼は妻の心配が逆にうれしかったそうです。

彼は何度かハンターの指定した携帯電話に連絡を入れ、

「前向きに考えるために、まずは健康診断を受けてみようと思う」とか、

「重大な疾病を抱えたまま、某塾にお世話になるとしたら、気が引けるから」とか、

「某塾について察しがつくので、財務状況を調べている」とか、

「職場環境も調べている」とか、

「業界仲間にも聞いている」など、のらくろ戦術をかましていたようです。小生が彼から第一報を聞きましたのは、この頃でした。

石川数学塾大阪
学園前教室・杉浦

怪電話(起)-冬講日記(34)

彼のもとに、その電話がかかってきてから、かれこれ2年以上になるでしょうか。彼は塾屋の同業ですが、敢えて名を秘します。

「××(彼の本名です)さんですか?、あなたをヘッドハンティングしたいのですが…」。

彼は一瞬、わが耳を疑ったそうです。とりあえず、何のことですか?と、聞きなおしてみました。

「某塾があなたをご指名です。できるだけ早く、条件面を詰めたいのです」。

ちょっと待ってください。某塾って、どこですか?…彼はキツネにつままれたような感覚だったそうです。

「某塾との契約上、申せませんが、×××が×××ってスローガンを掲げている塾です」。

長い業界人生を、彼は生きてきましたから、もちろん知っていました。小生も知っています。

「人材開発は新規開校のためです。某塾は個別事業部のトップを探しています」。

「労働時間を現状の7割に、給与を現状の18割に、このベースから相談させてください」。

「お察しの通り、某塾には巨大な看板があります。万が一この交渉経過が外部に漏れますと、××さんにも某塾にも不利益でしょう。極秘に願います」。

聞いてもいないのに、彼は矢継ぎ早の「説明」を受けることになりました。

みなさん、彼はいったいどうしたと思われますか?

石川数学塾大阪
学園前教室・杉浦

あと一週間、冬講日記!

こんにちは。学園前教室の杉浦です。

冬講日記、新年一週目を終了しました。

新しい年らしく、カラッと爽やかに書きたかったんですが、…ボヤいてしまったかもしれません(笑)。

ご覧になってみてください。

http://blog.livedoor.jp/ishikawasugakujuku/archives/cat_910297.html

新年第一週の記事です。

夜討ち・朝駆け-冬講日記(28)
ボロボロだけど-冬講日記(29)
彷徨-冬講日記(30)
ムチャクチャ-冬講日記(31)
官僚-冬講日記(32)
久しぶり-冬講日記(33)

石川数学塾大阪
学園前教室長・杉浦

久しぶり-冬講日記(33)

久しぶりに登校しました…との報告をいただく昨今です。

「明日から学校、再び登校」という日に感想を求めますと、生徒の7割が「憂うつです」とか、「行きたくありません」とか。あとの3割が「楽しみです」と。

「嬉しくもあり、うれしくも無し」みたいな中途半端は、ほとんどありません。

「行ってきます」と元気よく挨拶して、どこか学校以外に行ってしまいそうな皆さんにお聞きしましたら、「休み明けだろうが、そうでなかろうが、普段から行きたくありません」と、「このまま長期休暇が続いてほしいです」が半々くらいです。

みなさん、きっと学校では言えないであろうことを、正直にお話しいただきます。

小生なんぞ「近代公教育制度は、疲れ果てている」と嘆いていますし、「公教育が学校制度に支えられなければならないはずはない」と真剣に考えていますし、「公権力の教育介入を最小限に減らし、とりあえずガイドライン行政まで撤退させ、ゆくゆくは文部科学権力を解体すべき」と、持論を奉じてウン十年ですから、いまさら驚きもしません。

しかしながら、声なき声を大声で聞くにつけ、「そろそろ急がねばならないのかもしれない」とも思っています。

最終目標は「公教育民営化」、見果てぬ大きな夢であります。

石川数学塾大阪
学園前教室・杉浦

官僚-冬講日記(32)

「官僚的」という言葉があります。「通りいっぺんの」とか、「肩ひじ張った」とか、果ては「血の通わない」とか、何かとマイナスイメージに捉えられがちな言葉だそうです。

「官僚って、そもそも何?」という質問も、たくさんいただくようになりました。「どこにいるの?」、「何をしてるの?」、「誰のことなの?」…と。

小生の大学の同級生のMくんは、文部科学省にいて、文部科学行政を担っている官僚で、昔は気のいいオッサンだったんだけど、いったいどんな顔して「官僚」してるのかなぁ…とか、某国大使館にいるTくんも同級生だったんだけど、とにかくまじめで口が堅い奴で、外交秘密を扱うには天職なのかなぁ…とか、具体例を出せば出すほど、五里霧中に感じる皆さんもいらっしゃいます。

少し事情を知っっている皆さんは、「天下りする人たちだね。悪い人たちなの?」…などと。

昔も今も「官僚」するのは、楽じゃないのでしょうか。

一方で「官僚、大いに結構。仲間になろうじゃないか!」と、大声を張り上げた豪傑がいます。我が国の初代内閣総理大臣・伊藤博文公です。

博文伯爵がおっしゃるには、官僚の親分が政治家、政治家は選挙に落ちたらただの人、だから有権者の嗜好品になり下がることしばしば、親分のポピュリズムがこの国のあり様をコロコロ変えちゃ堪らない、それには官僚がしっかりすること、官僚がこの国をブレずに舵取りすればよい…と。

博文伯は、官僚養成機構としての帝国大学(当時は、のちの東京帝国大学のみ)を重視、文部行政の親分に、官僚を御するに慣れた開明派・森有礼子爵を起用したのでした。

帝国大学卒業の官僚たちが、のちの博文伯率いる政友会に流れ込み、名実ともにこの国を引っ張っていくことになるという歴史的事実、…多くの皆さんが知るところであります。

博文伯の先見に驚くとともに、ものごとを一面的に見るのではなく、多様な観点を持ち続けたいものだと、今も思い続けています。

石川数学塾大阪
学園前教室・杉浦

ムチャクチャ-冬講日記(31)

長年受験指導していますと、受験直前の受験生が、半端なく勉強漬けになっている姿を、毎年見ることになります。

もちろん目先の「合格」を克ち取るために必要なことでもありますが、それだけですとあまりに空しいことになりはしないかと心配です。

おそらく多くの人々が、生まれてから受験までの人生の、何倍も長い「余生」を暮らすことになるでありましょうから。

小生は自問自答します。「はたして、このムチャクチャじみた勉強が、再び報われる日が来るのだろうか?」と。

小生の杞憂をよそに、立派に成人していく教え子たちが、答えを用意してくれます。

中学入試を経験した皆さんは、「だからこそ大学入試を乗り切れた」と言います。

「一度できたことは、きっともう一度できる」から…と言います。

会社に就職してから、昇進試験や資格取得試験に積極的に臨めた…との声も聞きます。

「少なくとも、逃げようとはしなかった」そうです(笑)。

意外なことに、息子・娘にも経験させたい…と、おっしゃるかたが多いです。

幼いころから受験競争で苦労されたご両親が、ご自身の子供さんには同じ思いをさせたくない…と、エスカレーター校を選択される、そんな一昔前とは、隔世に感じられてくるほどです。

「鍛えられずにノホホンと生きていくなら、それこそ最恐」だとか(笑)。

受験なるものは、世代を超えて、さまざまな色に塗られるものでありましょう。彩色表皮を一皮めくると、中身は何も変わっていなかったりもしますが。

ともあれ、ムチャクチャにもかかわらず、いや、ムチャクチャだからこそ有意義なもの、受験以外になかなか思い当たりません。

石川数学塾大阪
学園前教室・杉浦

彷徨-冬講日記(30)

どうやら「じっと一ヶ所に留まっていられない」癖があるらしく、あれこれ理由をつけては歩き回っております。

小生みたいな人間にとっては、まぢかにありながらも全く気づいていなかったような、見たこともない光景に出会えることが無上の喜びであります。

同好の皆様に、ほんの少しアドバイスさしあげます。

まず、やたら遠くに行こうとしないこと。近場の路地裏から攻めてください。

遠くに行って驚けることなら、まだ出会っていないだけで、きっと近くにも隠れております。

次に、できるだけ手間暇かけず、お金もかけないこと。

ゼニと暇にまかせて買ったモノは、すばらしくて当然、これっぽっちもありがたみがありません。

最後に自分の足で歩くこと。

乗り物を使ってもいいですが、乗り物べったりはいただけません。「自分で歩きついたところ」と、「乗り物が連れて行ってくれたところ」は、似て非なるものです。

お気に入りのお散歩ルートができあがりましたら、さあ、早起きして歩きましょう。

俗世を超越する自分に出会えるはずです。

かっこよく、ひとことどうぞ!

「浮世にゃ、興味ありまへん!」

石川数学塾大阪
学園前教室・杉浦