作者別: 石川数学塾大阪
霞-春講日記(6)
春と言えば、この現象も見逃せません。万葉集の巻十・一八一二番から。おそらく、柿本人麻呂です。
ひさかたの 天の香具山 この夕(ゆふべ) 霞たなびく 春立つらしも
時は立春の頃、春霞が立ちのぼったらしく、遠く香具山がかすんでみえることだなぁ…と、一見何ということもない叙景歌です。
ところが近年とみに、黄砂だか霞だか原因判別不能なボヤケを見るにつけ、春の朝、なんとなく目前が見通せないからと、こりゃあヤバいっとばかりに、洗濯ものをしまい込み始めるようになりました。
おそらく万葉人たちは、こんなあんばいに春霞を畏れはしなかっただろうと推測しますし、そもそも黄砂が原因では、風情もヘッタクレもあったものではないわけですね。
霞は空気中の余剰水蒸気が、水滴となって漂うもの、長い冬の終わりと春の到来を告げる、趣深いものであると心得たいものですね。
桜-春講日記(5)
早咲きの桜というものがありまして、開花前線に先駆けて、きれいに咲いてまいります。小生の住まう佐保川沿い、川路桜の堰堤にも、けっこうな盛り上がりでして、本番のソメイヨシノを、春講忙しさのあまり、じっくり見られない小生などは、思わず見惚れてしまいます。
この歌に詠みこまれている桜が、早咲きであるか否か、全く定かではありますまいが、小生には早咲きに思えて仕方ありません。万葉集の巻八・一四二一番であります。
春山の 咲きのををりに 春菜(わかな)つむ 妹が白紐(しらひも) 見らくしよしも
最愛の人が、満開の桜の下で、春の七草を摘んでいるのでしょうか。詠み人・尾張連(おわりのむらじ)、なかなかのロマンチストと拝見しました。
遅咲きの桜さえ、散りかけた四月の中旬、春講を終え、山辺を歩き、いや「歩く」などと、言ってしまって良いものやら、古墳をウロウロ、土器探しに余念のない小生も、同じく古墳周辺をウロウロしている妻と、声を掛け合ったりしております。
小生が「庄内式、布留式…」「三世紀、四世紀、五世紀…」などと、悦に入ること暫し、妻もまた「つくし、わらび、ぜんまい…」と、山菜採りに余念なし。
万葉も現代も、変わらぬ悠久を感じる瞬間であります。
返-春講日記(4)
さて昨日、大原の藤原夫人を茶化した天武天皇、藤原夫人に反撃されてしまいます。万葉集の巻二・一〇四番です。
わが丘の おかみに言ひて 落(ふ)らしめし 雪のくだけし 其処に散りけむ
あなたが誇らしげにおっしゃっている雪ですけどね、私がこちらの丘の神に言って降らせたのでございますよ。あなたのいらっしゃる浄御原宮には、その雪の砕けた残骸が降り積もったのでございましょうよ。オホホホホホホォ~!…と、おおよそこんな意味です。
はい、少しばかり意訳に過ぎましょうか。それでも、こんなに面白い訳を思いついてしまいますと、なんとも我慢しきれずに、ついつい虎視眈々と、発表の機会を待ってしまう小生でした。
それはさておき、この掛け合い漫才のような相聞歌、何とも素朴で、ユーモラスだと思われませんか。壬申の乱を勝ち抜いた覇王・天武が、まるで形なしです。
微笑ましくも人間らしい、ご先祖のありようを、昭和天皇も愛されたといいます。小生も大原の里に、この万葉歌碑を眺めるにつけ、やはりほくそ笑んでしまいます。
雪-春講日記(3)
春なのに…関東平野部では、積雪だそうです。奈良もミゾレ交じりの雨、昨夜からキ~ンと、寒くなってまいりました。
雪と言えば万葉集に、昭和天皇が愛された歌があります。詠み人は天武天皇です。妃の藤原夫人(ふじわらぶにん)に、宛てたものです。
わが里に 大雪降れり 大原の 古(ふ)りにし里に 降らまくは後(のち)
我が浄御原宮(きよみがはらのみや)に、大雪が降ったのだよ。あなたの住む、大原の古びた里には、あとで雪雲が流れていって、雪を降らせるのだろうね…と、そんな意味になります。藤原夫人が住む大原の里を、茶目っ気たっぷりに茶化しているわけですね。
明日香村の大原と言えば、夏合宿の拠点=飛鳥寺研修会館から指呼の間、鎌足産湯井や藤原廃寺などあり、中臣氏の拠点地域でありました。中大兄と鎌足は、大原経由で南淵山に通い、漢人請安と乙巳のクーデターを画策したといいます。
もちろん浄御原宮跡からも至近距離、雪が降った降らないでもなかろうか…と思います。
天武天皇おそらくは、藤原夫人にゴロニャンしたかっただけかもしれませんが、実はこのあと手痛いしっぺ返しを食らうのですね。
そのお話は、また明日にでも…。
今週より春期講習が始まりました。
年明けから怒涛のごとく続いてきました、中学校、高校、大学の受験ですが、一部の結果発表を残し、ほぼ終息しました。
いよいよ新しい季節の始まりですね。
石川数学塾大阪でも、今週より春期講習がスタートしました。
来春の栄冠を目指して、共に頑張っていきませんか?
石川数学塾大阪の春期講習は通常授業と同じく、生徒一人ひとりの習熟度やスケジュールに合わせて、カリキュラムの内容や受講の日時・回数が決められます。
いまはまだ席に余裕がありますが、すぐに埋まってしまうかもしれません。
昔から「善は急げ」っています。最近では「いつやるの?今でしょう!」(笑)。思い立ったら即行動。
みなさんのご参加をお待ちしています。
雨-春講日記(2)
「春雨じゃ!ぬれて参ろう!」、しとしと雨が似合う季節です。
移動性高気圧が、大陸からとんできます。高気圧のあとには、低気圧と前線が控えています。
大崩れするわけではないですが、いかほどか規則的に降る弱い雨は、こんなメカニズムに因るわけです。
ぬばたまの 黒髪山の 山菅(やますげ)に 小雨降りしき しくしく思ほゆ
万葉集巻十一・二四五六より。柿本人麻呂作でありましょう。黒髪山の山菅にふり続ける雨のように、あなたのことを想い続けておりますよ…と、恋の歌であります。
山菅の花から察するに、季節は初夏、もしかするとジメジメした梅雨の時期かと思われます。残念ながら、春雨の季節ではないでしょう。
しかしながら、思い続ける気持ちを例えるに、春夏の違いは、たいしたものでもありますまい。
大仏鉄道の黒髪山トンネルが消え、やすらぎの道が貫通し、黒髪山は何処と知れず。
そんな現状も相まって、余計に切なくなる雨であります。
春-春講日記(1)
まだまだ、うすら寒い日もありますが、着実に春の足音が近づきつつあります。万葉集巻十・一八七八番より。
今行きて 聞くものにもが 明日香川 春雨降りて たぎつ瀬の音(と)を
せっかく春雨が降ったのだから、今すぐに行って、明日香川の瀬音を聞きたいものだ…と、詠み人知らずです。
せっかく春が近づいているのだから、今すぐに行って、明日香村を歩きたいものだ…という八名の皆さん、昨日の飛鳥ウォーキング、ご参加ありがとうございました。
テーマは今年も「教科書に載っていない飛鳥」、ご堪能いただけましたでしょうか。
せっかく春休みになるのだから、今すぐに奮起して、春期講習を頑張りたいものだ…という多くの皆さん、いつも通り、春からがんばりましょう。
キーワードは「今すぐ」。
「いつか聞こう」では、明日香川の瀬音を聞き逃します。勉強もこれと同じ。「いつかやろう」ではなく、いっちょう根性決めて、今すぐやろうではありませんか。
春はダッシュの季節です!