不定期冬講日記(その11)

彼は困っていました。

「過去問、解いてみたんですけど、1割2分くらい(合格最低点に)足りないんです。きれいにどの教科もです。(僕は)実力が無いのでしょうか?」。

小生は言いました。

「実力=得点だろうか?過去問に慣れること、これに実力を加味して得点だと思うが、いかがだろう?過去問を始めたのはいつだい?」

彼は答えました。

「最近です。模試も含めて、過去問に触れる機会が、今まであまりなかったです」

小生は諭しました。

「入試問題を出題する側は、得点で実力を測りたいと思っている。模試を出題する側も、同じだね。しかし出題される側も、だんだん学習してくる。得点を取ることで、実力をアピールしたい。できうるなら、実力を上回る得点を稼ぎ出せれば、それも実力と見なされるに違いない。それには出題に慣れるしかない。そう考えて秘かに過去問を解いている人たちが、たくさんいるのだよ。」

「今からでも遅くない。今期の出題が予測できるほどに、過去問をやりこなしたまえ。君の実力をじゅうにぶんにアピールできる時が来るからね。」

入試には時として、隠されたテクニックを知るように促されます。テクニックに走り、おぼれ、自滅することは愚かの骨頂ですが、必要悪を行使することは、むしろ不可避なことではないでしょうか。

あまつさえその必要悪に、なんらかの動かさざる真理があり、隠された事実があるのなら、むしろ積極的に白日の下にさらし、闘いの刃に資することが、必要悪にとっても本懐…そう考えています。

石川数学塾大阪
学園前教室・杉浦

不定期冬講日記(その10)

授業中ちょっとした雑談が、深く核心をつくことがあります。

最近では「0点をめぐるあれこれ」、こんな話題がありました。

「100点取るのは難しいけど、0点取るのは簡単ですよね」、ポロリともらした生徒がいました。

「…?。ホントにそうだろうか?確かに白紙の0点なら簡単に取れるね。人生の無駄遣いを厭わなければね。」

「デタラメに書いても、0点取れるとは限らないね。記号選択や自由記述がほとんどない教科、たとえば算数なら取りやすいかもしれない。」

「しかし特に他教科、記号選択がほとんど四択だと仮定して、ほとんどデタラメに書いても25%は正解してしまう確率だよね。」

「算数にしても、デタラメな数字が、たまたま正解にヒットしてしまわないとも限らない。」

「大事なことだ。よく聞いときなよ。がんばって0点取るためには、正解を丹念に外す学力が必要なんだ。もしかすると、100点取る以上に難しいことかもしれないよ。」

「ふ~ん、0点取るのが難しいなんて、思ってもみなかったよ。」

変な結論ですけど、「学力」の本質を、一面言い当てていると思うのです。

生徒たちは塾に来ることによって、学校だけで勉強しているんじゃないことを知ります。今回は、教材がテキストや問題集だけじゃないことを知りました。

貴重な経験でしたね。

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学園前教室・杉浦

不定期冬講日記(その9)

不健康自慢というわけではないでしょうが…。

冬期講習が始まり勉強漬けになって、しばしばお聞きするお悩みがあります。「頭痛、腰痛、肩こり」と。

小生も頭痛を患うことは稀でしたが、「腰痛、肩こり」にはずいぶん悩まされてきましたから、惻隠の情を禁じえません。

特に腰痛は強烈で、いわゆるギックリ腰レベルのものが、1年に数回襲ってきました。

鎮痛消炎剤やら筋肉弛緩剤やら、いろいろ試してみたのですが、しょせん対症療法と判るのに、それほど時間を要しませんでした。

そこで小生が編み出した解決法です。

病因は「仕事・趣味を分かたずに、ずっと椅子に座り続けて、難しいことをしゃべったり読んだり書いたりし続けていること」と看破し、これと真逆の時間を必ずつくること…こう決めました。

具体的には出勤時間に余裕のある平日、毎朝ウォーキング90分、出張のない日曜、山辺道(桜井→天理)くらいを歩き切ると決めました。

不思議なことに腰痛がほとんど消えて、たまにチクッとする程度になりました。肩こりも腕をグルグル10回まわすと気にならなくなる程度です。

深刻そうな不健康でも、ちょっとした心がけとほんの少しの実行力で、好転することがあると思います。

薬頼みや神頼みの前に、試してみてください。

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不定期冬講日記(その8)

街宣車(…といいますと、イカツ過ぎるかもしれません)、かまびすしい昨今です。

「男」も熱心な政治活動をしていました。張り切って選挙スタッフをやりに行っていたものです。

仕事帰りに車で寄り道しては、「支持者発掘」に余念がありませんでした。

「今日はどこまで?」と聞きますと、うれしそうに返答が返ってきました。

「断層があって、山があって、山超えた尾根づたいの××寺」。

「…って、断層の向こうに車停めて、あとはケモノ道?」

「うん。卵、投げつけられた。ウチは△△党じゃ!帰れ!って」。

卵や△△党はともかく、××寺に住職がいたことが驚きでした。無住の荒寺とばかり思っていました。

「男」の政治活動って、こんなものでしたが、通いつめている間に仲良くなって、支持者名簿に名前が書き連ねられていくのも、不思議なものでした。

「男」は最後の選挙を戦ったあと、帰らぬ人となりました。分厚い名簿が残りました。

「男」の奥さんは、名簿を今でも大事にどこかに隠しています。

「急ごしらえの名刺に、選挙参謀とか書いてある人には、絶対に見せません」だそうです(笑)。

一度だけこっそり見せてもらった名簿には、理想に殉じた「男」の手垢が染みついていました。

小生は、まっすぐで一徹だった「男」が大好きでした。最後の戦いも小雪まじりの師走だったと記憶しています。

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不定期冬講日記(その7)

昔々のお話です。

大阪・兵庫・京都・奈良の中学入試統一解禁日がすっかり定着した昨今から慮るに、もしかすると全く想像を絶する事態だったかもしれません。

大阪・兵庫・京都の「統一初日」が3月、奈良は1月に五月雨式…という時代がありました。

正月明け早々に奈良の中学入試が始まります。日曜日ごとにきれいにバラけておりました。

前受け・本命、入り乱れて、騒乱怒涛に過ぎ去っていったものでした。

2月は戦士の休息…と思いきや、大阪・京都の統一初日までに、補欠出しまくっても入学定員を埋めてしまいたい奈良と、水面下の動きを秘かに注視する大阪・京都のせめぎあい、なんとなくザワついたまま3月を迎えます。

大阪・京都の受験終了と入学者召集・確定を受け、奈良が最後の大規模な補欠を出すため、ザワめきは3月末まで続くのです。

毎年繰り返される「激動の3ヶ月」を、今や果たして知っている業界人がどれほど残っているのか、受験日程前倒しゆえに、強気に押しまくった奈良の中学校と、それらに正面から闘いを挑んだ塾屋たち。

寒さが身に染みてくると、あの熱い日々を懐かしく思い出します。

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不定期冬講日記(その6)

小生、毎日、お昼のおにぎりを持ってきます。最近、具はササメに凝っています。

それほど自慢できたシロモノではありません。どれほどひいき目に見ても、明らかに不細工です。ササメも塩加減も、均一でないことがあります。ササメ密度が部分的にメシ密度を超えていたりします(^_^;)。

にぎり始めたころには、野球のボールのようにまん丸でした。いちおう三角形になりましたが、まだ愛車Zのように車高が低いです(笑)。

暇だからにぎっているわけではありません。小生の朝は忙しいです。5時起床。珈琲を挽きながら、朝刊各紙のヘッドラインをネットでチェック。トーストをつまみながら、掃除・洗濯。おにぎりをにぎって、朝シャワーして、着替えを詰め込んで、ゴミ出しして。Zに点火するのが、きっちり朝7時です。

それでも前夜にお米を研いで、炊飯器をしかけて、炊き終わったらしっかりお釜を洗って、一週間に一回は分解洗浄して…と、やたら楽しくて仕方がありません。

おにぎりがあれば、どんなに昼が忙しくても大丈夫。懇談等でない限り、片手で食べながら仕事できます。生徒諸君も片手で食べられるものは食べながら、もう一方の手で鉛筆を走らせています。小生も然りです。

美味くても不味くても、いっさいがっさい自分の責任、わかりやすくて良いです。

明日は少しだけ具を変調させて、小さめににぎってみましょうか。誰にも気づかれない密やかな楽しみがあってこそ、のっぺらぼうな毎日を避けることができるのだと思っています。

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不定期冬講日記(その5)

教室には「主」がおります。

「あるじ」と読みますと、小生のことです。小生は、石川数学塾大阪・学園前教室長です。

「ぬし」と読みますと、「あるじ」のような、半ば公的役職…ではありません。

教室にへばりつくように、堅忍不抜、克己勉励する生徒のことです。

多くの生徒たちが、畏敬の念を込めて、彼(彼女)を「ぬし」と呼びます。

「ぬし」は小生の間近に陣取り、小生の発するさまざまな叱咤激励をモノともせず、もちろん動ずることなどなく、黙々と課題をこなします。

小生の机に置かれていく解説順番取りのための小物など整理し、笑み、泣き、笑い…そんな様子を見ていますと、十分に授業の流れをふまえておりますが、柳に風と受け流すことも忘れません。

『遠野物語』の「ざしきわらし」を彷彿させる、かわいらしい守り神といったところでしょうか。

「ぬし」は今日も覚悟を決めて、厳しい一日を過ごします。

誰よりもすばらしい入試結果を叩きだすのが、他ならぬ自分自身=「ぬし」であることを知るのも、もうすぐ、ほぼ一か月後です。

「ぬし」くん、今日もがんばるのだよ!

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不定期冬講日記(その4)

「怒号が教室に響き渡り、怠惰な学生をして粛然襟を正さしめ」たと、描写された授業があります。

このブログにも「師匠の思い出」として連載いたしました、我が師の授業です。

『退官記念論文集』に、一番弟子の先輩がお書きになりました。

師匠には遥かに及びませんが、毎日講習していますとボチボチ小生に叱られる生徒も出てきます。

小生、できなくても叱りませんが、できようとしないときには怒号を浴びせます。

悪くても叱りませんが、良くなろうとしないときには除名を宣告します。

線引きは明快です。ブレません。

学業も生活も、できようとしなければ、できるようになりませんし、良くなろうとしなければ、決して良くならないからです。

勝負は時の運、一敗地にまみれても、臥薪嘗胆、次を目指す人間になってほしい。

だから、まずは自ら、今日もあきらめずに生きていこうと思います。

生徒諸君には、私の背中についてきてほしいです。

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冬期講習開催日について

早々の冬期講習へのお申し込みありがとうございます。

ただいま先着順にて受け付けておりますが、
ご参加希望の方で、案内掲載済みの開講日の時間と合わない、
曜日が合わない等とお困りの方がおられましたら、ぜひお気軽にご相談下さい。

案内スケジュール以外でも出来る限り対応させていただきます。

詳細は直接高の原教室へお問い合わせ下さい。

高の原教室 飯尾

不定期冬講日記(その3)

不思議なことですが、小生、塾の先生をやっていて「つらい仕事だ…」と思ったことがありません。

好きな仕事を、好きなだけやっているからですね。「きらいだ…」と思えるほどに、我慢してやったことがないのです。

ですから、生徒たちにも少々奇妙に語りかけます。

「目の前にいるおじさんは、好きな勉強を好きなだけやってきた人です。好きな仕事も好きなだけやってきました」。

「好きなことを寝食忘れてするのは、あたりまえです。偉くもなんともありません」。

「きみは勉強が好きでやっているのですか?え…嫌い…?そうですね、10万人中99999人は、嫌いでしょうね」。

「でも、我慢してやっているんですね。偉いなぁ。私にはできないことをやっているあなたは、偉い人です」。

「このまま偉い大人になってください。もしかして、我慢してやっていたら、勉強を好きになるかもしれません」。

「それもまた良し。嫌いなままでも、また良し。勉強も仕事も、人生そのものですからね」。

勉強嫌いな自分に自己嫌悪だった生徒諸君、肩の荷が下りたように感じるそうです。

勉強は好きだからするものだ…って、何たる偏見、何たる妄想!

きっとたいへん勉強好きな学者さんが造り出した、大きな大きな虚塔なんでしょうね。粉砕あるのみです(笑)。

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