念-冬講日記(16)

小さな珈琲屋さんで、マンデリンを飲んできました。最寄駅から歩いて三十分、テーブル三つ、カウンターなしといった小さな店です。

店の構えは小さいながら、こだわりのブレンドが三十種類以上、ホットケーキだけの軽食もなかなかの味わいで、昭和四十年開店の風格が感じられるたたずまいです。

ホットケーキをムシャムシャ、マンデリンをズルズルしていますと、いかにもお上品な、ご年輩のご婦人がポツリとおっしゃいました。

「昔から、よく通わせていただいてるんです。最近は満席のことが多くて、めったにお邪魔できません。今日は幸運でした。」

なるほど、そうしますと、妻に連れられて初めて来訪しました私が、スルッと入店できてしまいましたのは、超幸運ということになります。

妻に聞きますと、妻も二年越しに念願成就とか。

何かにつけて私は、ダメならダメでさっさと忘れてしまうほうですから、ご婦人と妻の執念に感服した次第です。

勉強もこうありたいものだと、退店のまぎわ、頭をよぎりました。

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