楽-冬講日記(13)

日曜日も男は、あいかわらず早朝に起き出します。ほとんど水と食料だけ入ったリュックを担いで、ほとんど誰も乗っていない休日早朝のJRで、意気揚々と出かけます。

桜井か三輪で降りると、テクテク歩きはじめます。こんもりした起伏を見ると、必ず立ちどまります。

「立入禁止 宮内庁」の立札が無ければ、丘に登ります。古墳ですと墳丘頂です。茅原大墓の後円部頂から、はるか葛城・金剛を見渡すのが好きだそうです。

男はブツブツ言いながら、何か拾い続けています。「壺」とか、「甕」とか、「埴輪」とか、「口縁」とか、「突帯」とか。

素人でもわかる言葉から、複雑怪奇な呪文まで混在しています。

「弥生Ⅴ」とか、「庄内」とか、「布留Ⅰ」とか。土器編年の名称なのですが、ここらあたりになると誰もついていけなくなって、同伴者がいても(妻であることがほとんどですが)、放っておかれます。

「ヤマト土着」とか、「尾張」とか、「吉備」とか、「近江・越」とか。外来系土器の由来ですが、もうこの頃には、半径50メートル以内にほとんど誰もいなくなり、遠く二上山に夕日が沈みかけています。

男は楽しくてしかたのない勉強をしているのです。テーマは「邪馬台国と初期ヤマト王権」ですね。

何を隠そう、男は私です。私は理想的な勉強を堪能できる、根っからの幸せ者なのですね。

石川数学塾大阪
学園前教室・杉浦