「入試に通ってほしいんですよね。親御さんとして、あたりまえの感情ですよね。」
「あたりまえどころか、日増しに強くなってまいりますでしょう。皆さん、そうおっしゃいます。」
「入試に向かって、わき目もふらず、まっすぐに、まっしぐらに…。お気持ち、痛いほどわかります。」
「はい、私には確かに、息子も娘もおりません。しかしながら、だからといって、子育てがわからないとおっしゃいますのは拙速です。」
「私に子育て経験がないように、失礼ながら、たいへん失礼ながら、親御さんにも、十万人もの生徒を指導してきた経験は、絶対にございますまい。」
「私に言わせていただけば、絵に描いた餅のようにまっしぐらな子供、現実には皆無です。」
「そんな幻想、たちの悪い都市伝説に思えます。」
「問題は、こういうことではないでしょうか。現実が理想からブレることが問題なのではなく、ブレたときに、ただ慌てふためき、有効に対処できないことこそが問題だと。」
「要諦は焦らないことです。少し立ち止まって、人間としてあるべき姿を語りかけてあげてください。決して、勉強に矮小化してはいけません。」
「どれほど時間がかかっても、これこそが万能薬です。」
入試は現世利益でしょうか、それとも普遍的な人間形成でしょうか。深くお悩みのご父母と、交わさせていただく会話です。
避けて通れない深刻な問題ですが、一朝一夕には解決しそうにありません。