大阪通信 Vol.104 配布開始しました。
久しぶりに「読破中!」です。今回は、枕をどうぞ。
「忙中閑あり。映画を観て参りました。この間、ずっと観たかったモノたちです。
まずは中島みゆき、劇場版の新作、「一会」。「一期一会」の「一会」でしょうか。前作「橋の下のアルカディア」のゼロ戦シーンが強烈でしたので今回も…?と思いきや、ノーマルの劇場版に戻っておりました。小生古より、なんだか沈み込むと、中島みゆきさんだの、森田童子さんだの、唸り出す癖があります。中島さんを「ネが明るい皮肉屋」とすれば、森田さんは「救いがたい真っ暗闇」みたいで、甲乙つけがたく、今日に至っております。しかしながら、「もう二度と笑顔には、なれそうもない」と「時代」を唄い、「シュプレヒコールの波、通り過ぎてゆく」と「世情」を唄った中島さんが、「地上の星」や「麦の唄」を力強く唄っている姿を観るにつけ、隔世の感を禁じえません。…森田さんは?と言いますと、「ぼくたちの失敗」以来、永い忘却の彼方にありまして、そう考えてみると、「隔世」は他ならぬ自分自身なのかもしれない…とも思います。
お次は、遠藤周作原作「沈黙 -サイレンス-」。はい、文芸大作です。江戸時代初期、キリシタン禁教の時代、棄教して幕府にすり寄った(転んだ)バテレンを描きます。暴虐の嵐吹きすさび、たとえわが身は転んだかに見えようとも、心まで売り渡したわけではないという、そんな沈黙もあるのだと、深くうなづいて客席を見回しますと、やはり皆さん、深くうなづいていらっしゃり、きっと同じような人生を歩んでこられた皆さんなんだと、妙な連帯感が生まれてしまいました。それにしても、「我々はぁ~断固としてぇ~この闘争をぉ~貫徹しぃ~」と叫んでいらっしゃった方々、信念の沈黙を貫き通しているのだろうかと、小生も含めまして、自信がない近頃です。企業戦士、マイホームパパ、世捨て人…何に身をやつそうとも、変わらぬ信念がありたいものだと思います。
最後に、生まれて初めて観たアニメ映画「この世界の片隅に」。はい、反戦映画なんだと思います。クラウドファンディングでもって製作費を賄われたそうですが、出資した皆さんは、一人の例外なく「非戦・反戦」の人々だと思います。小生古い世代ですので、「非戦・反戦」といえば即座に拳を突き上げて、シュプレヒコールと戦闘デモになってしまいます。しかしながら本作は、終戦前後の軍港・呉が舞台であるにもかかわらず、戦争があろうがなかろうが、圧倒的に日々暮れゆく日常を描いています。小生ほんの数秒だけ、奇妙な違和感を感じましたが、小生の持っているような古いパラダイムが圧倒的に無効であることを宣言されたようで、呆然としてしまいました。気がつくと満員の劇場のあちこちに、同じように呆けにとられたご年輩の御仁が…。そうですね。「帝国主義的侵略を、内乱に転化せよ」とか、大声で叫んでいた御仁でありましょうが、これまた小生も含めて、「帝国主義」が名札を付けて、目前に登場したことなど無かったわけですし、「内乱」が起きた記憶も無かったわけです。何かが変わってしまったようで、寂しくもありましたが、カビの生えたパラダイムなど、シフト転換するに如くは無し。圧倒的日常に身をゆだねてみるのも良かろうと思いました。
さて、久しぶりに「ただいま読破中!」をお届けします。大昔『全共闘グラフィティ』の頃から、最近の考古学まで、ずっとお世話になっております新泉社さんの最新刊、シリーズ「遺跡を学ぶ」の面白いとこ取りでお伝えします。寒い冬、こたつに入って、ミカンとお茶と何か一冊。お好きな本をお読みになってください。」
大阪通信 Vol.104、石川数学塾大阪・学園前教室にて好評配布中です。ご自由にお持ちください。
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ご覧になってみてください。