男の脳裏には、楽しかった冬休みの記憶だけが蓄積されています。
子供の頃のクリスマスやお正月から始まって、仕事漬けだった日々、山奥で雪に閉ざされた記憶まで、一様に楽しいものでした。
大掃除や、お年玉や、年賀状など、お手伝いからメインの労働者になり、もらう立場から与える立場になり、山ほど書いていたのが関係者数名だけとのやり取りになり…、いろいろ変わりましたが、晩秋、冬の空気が凛として感じられるようになると、男はウキウキしてくるのでした。
「え?ワシって、あと八年で還暦かいな?」
と、唐突に気づいて驚いた近頃、大人しくなる気も全くなく、今年はどんな雪だるまを作ろうか?とか、豆撒きと恵方巻きはどうしよう?と、やはりウキウキしている己に驚いております。
「人生なるもの、楽しむに如くは莫し」。
もし今夜、わが身がついえても、いい人生だったと悠然と旅立ち、あの世で卑弥呼と語らいたいものだと、思い続けることにしています。