恋-冬講日記(1)【2016/12/01(Thu)-01/】
恋ひ恋ひて 逢(あ)へる時だに 愛(うるは)しき 言尽(ことつく)してよ 長くと思はば
「恋」と書いてバッチリだったはずの書き取りが、いつのまにか「変」になっており…。
「そりゃあ、たしかに「変」にもなるわな。熱い「恋」なんやろね」…なんぞと、藪から棒に突っ込まれ、恥ずかしいやら、辛いやら。
「幽霊の 正体見たり 枯れ尾花…と、「変」になりそうな「恋」も、冷めてみたら、存外たいしたものでもないかも」…と、こんどは冷静にあしらわれ、恥ずかしさも倍増、辛さも三倍増。
思わず笑ってしまうような、書き取り誤記一問、そんな小さなきっかけからも、無限の宇宙が広がっていそうで…。
小生も例外たりえず、授業することが好きな「教え人」とは、いつの時代もこんなものです。
冒頭、恋の万葉歌人といわれる大伴坂上郎女(おおとものさかのうえのいらつめ)からです。
恋しい恋しいと想い続けて、やっと逢えるようになった時にさえも、愛情に満ちた美しい言葉を尽くしてほしいのよ、この恋が長く続いてほしいと思っていらっしゃるのなら…。
万葉ファン某紳士曰く、思わず守ってあげたくなってしまいそうな坂上郎女、好印象です…と。
同じく万葉ファン、こちらは某淑女曰く、いかにも甘え上手、好きになれません…と。
甲論乙駁、さもありなん。さりながら、色恋にあらずとも、好きなことに語り尽くしたいと、極めて自然な立ち行きではありますまいか。
小生、授業することに恋した「教え人」であります。ですからこの冬も「言尽くし」たいと思っています。