続S拾遺物語-春講日記(6)

Sさんの放談会が、快調なようです。今回は銀幕談義だとか。

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Sさん、けっこうな頻度で、映画観てらっしゃるそうじゃないですか?

「そうだな。最近だと、中島みゆき・『橋の下のアルカディア』、広末涼子・『はなちゃんのみそ汁』、佐藤浩市・『起終点駅 ターミナル』あたりかな。」

昔からでしたっけ?

「いや、ゴジラ対メカゴジラから、何十年も観てなかった(笑)。」

邦画ばっかり?

「ちと、河瀬直美さんにハマってな。直近モン、樹木希林・『あん』は、よかったね。『殯(もがり)の森』?『朱花(はねづ)の月』?、ハマり始めたのが、あの頃。宿命とか、輪廻とか、何やら得体の知れんモンが、見え隠れするやろ。元哲学青年にピッタリやね(笑)。」

しばらく遠くの劇場で観てらしたとか。草津って、ほんとですか?

「はい。ほんとです。他意は無いんだが、ワシ、映画観てて、よく泣くんよ。涙と鼻水とヨダレが止まらんくなって、巨大な濁流と化す(笑)。現場見たら、驚くで。恥ずかしいから、まわりじゅう、誰も知り合いのおらんところで観てた。」

意外ですね。ナントカの目にも涙?

「その憎まれ口にも慣れたよ。純真な万年青年と呼んでくれ。」

でも、わかるような気がします。中島みゆきのアルカディアは、Sさんにとっても理想郷でしょ。みそ汁とターミナルは、人情モン、河瀬さんは哲学モン、そう考えると一徹ですね。

「あん」で、ちょっと変わってしまわれたのかな、河瀬さんは。

「そうかもしれん。メジャーベースに乗せて、大衆社会に問う映画やし。むべなるかな。」

歩いて、掘って、読んで、書いて、観て…、Sさん、おつかれさまです。

「好きなことしかしてへんけど(笑)。世の中、好きなことだらけで、最高に幸せやね。感謝!」

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くりかえしますが、あくまでもフィクションです。

石川数学塾大阪
学園前教室・杉浦