何度かヘッドハンターとやり取りするうちに、彼は違和感の原因に思い当たりました。
ハンター氏の背後を飛び交うオフィス会話に疑念が生じました。
録音して何度か聞いているうちに、背景音が全く同じ会話という瞬間を捕えたのです。
たとえば、こんな具合です。
低い男の声「またとない条件ですよ。今決めちゃいましょうよ」
やや高い男の声「お世話になっております。××転職サービスです。今よろしいですか」
女の声「19時20分に、アポイントをお取りしました」
別の女の声「夕方までにFAXいただけますか。お待ちしております」
これらがタイミング良く、寸分違わずに、何度も輻輳するなどという偶然が、はたしてあるものなのでしょうか。
ハンター氏の背後に、あわただしいオフィスと思わせる何らかの仕組み、たとえば録音テープが流されているとしたら…?
彼はこれ以上深入りするのを避けようと決心しました。