ごんじゅごんじゅ-冬講日記(7)

寒くなってきました。ボタッと重ね着してしまいます。

エリが曲がっていたり、すそがビロビロ出ていたり、右と左の靴下が違っていたり…と、この程度は、生来意に介さない性分でしたので、しばしばおふくろに叱られました。

「そんな格好してると、ごんじゅごんじゅになるよ!」

生まれて五十年以上たった今でも、この言葉に深い謎を感じます。

おふくろに何度となく聞いてみたら、あらかたこんなことがわかりました。

「ごんじゅごんじゅ」という生き物は、おふくろが生まれ育った奥三河の実家付近、ごくごく狭いコミュニティでのみ認識を共有されていたもので、恐ろしくみすぼらしいものだったそうです。

毎日の生活にメリハリが効いていないと、人は容易に「ごんじゅごんじゅ」に堕ち、努力如何によっては、再び「ごんじゅごんじゅ」を脱することができるのだそうです。

なによりもこの生態を知る人々が、高齢化著しく、もはやまともに伝承されているとは考えづらく、ほとんどおふくろの空想生物になり果てつつあるようです。

ですから、おさなごころにも「ごんじゅごんじゅ」を恐れて、市井を丹念に見渡し、もしや今すれ違った人が、実は「ごんじゅごんじゅ」ではあるまいか?…などと、猜疑心無限大に居住まいを正していた幼い頃が懐かしいです。

大人になってみてわかったこと。

「ごんじゅごんじゅ」は自堕落の別称でした。誰の心にも住んでいて、ある日突然出現しますから、死ぬまで注意怠りなく生きていこうと思います。

石川数学塾大阪
学園前教室・杉浦