大阪通信 Vol.61 配布開始しました。夏合宿の来し方を振り返り、行く末を案ずる(?)、「夏合宿、今年も「約束の地」へ(後編)」です。
今回も、多少長いですが、blogで全文読めるように致しました。おつきあい賜りますと幸いです。
----------
平成23年の第4回夏合宿も終わって、ヤレヤレと安堵しておった小生でした。小生、夏合宿の時だけ明日香村に出没するわけではありません。豪雨でなければ、そして、よんどころない事情もなければ、週に一度の長距離歩行を、毎週日曜日にやっております。山辺道か明日香村、どちらかであることが多いです。山辺道なら桜井駅(or三輪駅)から天理駅まで、あっちこっちの古墳にずんずん入っていきますから、土器片や埴輪片をどっさり持って帰ることが多いです。明日香村ならド真ん中の旧飛鳥小学校を起点に、北は大官大寺跡から香具山あたりまで、東(東南)は飛鳥川沿いに石舞台古墳あたりで止めておけばいいものを、稲渕(いなぶち)や栢森(かやのもり)、いわゆる奥飛鳥まで、南はキトラ古墳、西は牽牛子塚古墳や益田岩船まで、山猿のようにウキウキ歩いております。
最近初見参のところでは、5月の連休に栢森の「さらら」さんにお邪魔しました。河瀬直美さんの映画がお好きな方、けっこういらっしゃると思いますが、栢森は『朱花(はねづ)の月』の撮影現場であります。カンヌ映画祭で、その映像美を絶賛された作品ですね。アイスコーヒー1杯だけで、女将さんと延々お話させていただきまして、申し訳なかった限りでしたが、映画冒頭の月が出てきた山とか、さららさんをそのまま使って撮影された栢森の寄合風景、飛鳥川下流の稲渕方面、飛鳥川上坐宇須多岐比賣命神社(あすかのかわかみにいますうすたきひめのみことじんじゃ)での撮影話、といいますか、そもそも日本一長い神社名をスラスラ言ってしまう小生は何者?ってな話、そして他所はさておき、当地・栢森に鎮座まします加夜奈留美命(かやなるみのみこと)と宇須多岐比賣命は姉妹か否か…などなど2時間も話し込んでしまいまして、ご迷惑をおかけいたしました。
こんなふうに楽しみながら、平成24年の第5回夏合宿に向けて、万葉文化館も酒船亭さんも、おもいきり横目に見て歩いていた…はずだったのですが、ある日、ふと気づきましたら、酒船亭さんが無くなっていました。ショックでした。思わず崩れ落ちてしまいました。「真っ白な灰」になった矢吹ジョーのようでした(すごく古いかもしれません)。「立て!立つんだ、ジョー!」と、丹下段平の叫び声が聞こえたきました。「幸せはいつも、手をのばせば掴み取れるくらい、すぐそこまでやってきて、悪戯な微笑を残し、足早に去ってゆく」。記憶にまちがいがなければ、哲学少年だった小生が、若かりしころノートの切れ端に綴った文句です。バーナード・ショウだったか、アンドレ・ビアスだったか、一生懸命読んだ直後でした。
さてさて悲しんでいても、食事が歩いてきてくれるわけではありません。どうしようか?こうしよう!と考えました。酒船亭さんに昼食・夕食お願いしました時も、昼食は麺類中心に酒船亭さんで調理していただいてましたが、夕食は石舞台古墳横のあすか野さんから運んでいただいて、酒船亭さんに並べられていたようでした。それならばあすか野さんに直接行けばよかろうと、うんグッドアイデアと納得した次第です。しかし考えねばならぬことがありました。研修会館さんからあすか野さんまでの距離が、酒船亭さんまでの3倍近く長くなることです。これを食事のたびに行き帰りするのは、かなり大変です。そこで結局、昼食・夕食共に、あすか野さんから運んでもらうことにしました。飛鳥寺の前を通って飛鳥坐神社(あすかにいますじんじゃ)の鳥居前を向かって右手に来ていただきますと、飛鳥寺前の信号を最悪5分待たねばなりません。これを回避して、大原方面に迂回し、藤原鎌足産湯井の前を降りていただくことにしました。食事完成から10分以内に運んでいただけます。この夏、平成27年第8回夏合宿にも踏襲される食事運搬作戦は、この第5回に完成をみたのでした。
さてなぜ延々と食事のことを書き連ねているのか、そのことを語らねばなりますまい。今夏第8回の合宿にあたって、先日あすか野さんに結集し、食事メニュー検討会をしてきました。あすか野さんに研修会館さんまで運んでいただくようになってから、毎年繰り返してきたことです。今回の参加者は、小生、妻、吉田先生、岡山先生、Q先輩でした。小生、生来出された食事はきれいさっぱり平らげる方でして、食事メニューにあれこれ希望を述べることが少ないのですが、小生を除く皆さんは、例外なく食事奉行を自負される方ばかりです。△日目と×日目のメインメニューを入れかえてみよう、野菜を増やしてみよう、煮物を増やして油ものを減らしてみよう、全体に昼食を増やして夕食を減らそう、残ったご飯をおにぎりにできるように、今年もご飯をたくさんいただこう…など、ひととおりの希望が出そろったあと、甲論乙駁二時間以上にわたって議論が弾みました。
いざ合宿が始まりますと、食事時間は勉強時間のオアシスになります。創意工夫、さらに楽しめる瞬間を造り出そうというわけですね。うんうん、皆さん本当に熱心です。滅私奉公、頭が下がります。
夕食が夕方くらいなのに、就寝が23時、夕食時間が早すぎないかというご意見も頂きます。しかしながら、小生は決して早すぎることはないと考えています。夕食時刻が遅くて胃もたれしてしまいますと寝られませんが、そうでなければ、もし寝られないとしたら昼間に疲れていないだけです。疲労困憊、失神睡眠できるように、しっかり勉強しておきましょう。胃もたれしていますと、朝起きられません。早起きできないと、貴重な早朝の時間を損します。ですから早めの夕食、しっかり睡眠、しっかり早起きで、がんばりましょう。食事は正しい生活のセンターラインを貫いているのですね。
猛烈な勉強には、適度な気分転換も必要です。せっかく風光明媚な明日香村での合宿です。例年通り散歩に出かけましょう。甘樫丘、伝板葺宮跡、飛鳥寺、入鹿首塚、水落遺跡、石神遺跡、飛鳥池工房跡、飛鳥苑池跡、飛鳥坐神社、酒船石、亀型石造物…少し列記しただけでも、もはや数えきれなくなっています。推古天皇が豊浦宮を構えられてから、持統天皇が藤原遷都なさるまで、飛鳥は百年の都でした。大王家に限定せずとも、渡来人の雄・蘇我氏が、はるか悠久の歴史をつむいできました。飛鳥にたたずみますと「輪廻に
裏打たれた宿命こそが歴史の本質である」などと少しかっこいいことも言ってみたくなりますし、ブツブツ言い続けたトドのつまりが、結局いつもフォイエルバッハテーゼ(カール・マルクス、『ドイッチェ・イデオロギー』、「フォイエルバッハに関する十一のテーゼ」)である小生の浅はかさに、地鳴りのような自己嫌悪が湧きおこってきます。「意識が存在を規定するのではない。存在が意識を規定するのだ」。いやはや、いつまでたってもこれで納得とは、小生修行が足りません。
思い直して、お散歩ですね。今夏第8回のお散歩奉行は、吉田先生です。夕食前の腹減らし、猛暑のあとの夕涼み、夕闇に潜む睡魔覆滅、最高の条件がそろったとき、散歩の号令が発せられます。楽しみにしていましょう。
奉行と言いますと、本年も進行状況奉行、健在です。岡山先生が担当されます。一時間に一度、ひっそりと背後に立たれます。しっかりやっていると許されます。エエカゲンかましてますと、ズキっとひとこと刺されます。スケジュールノートを持って、杉浦先生に申し開きに行くよう促されるかもしれません。岡山先生は、姿勢矯正のプロフェッショナルでもいらっしゃいます。少しくらい肩が凝った程度でしたら、バキ!ゴキ!と治されます。別名・藤枝梅安先生とお呼びください。
福島(姉)先生も、ご健在です。医歯薬系の進路選択を希望のかた、厳しく、熱意あふれる、愛情に満ちたアドバイスをお聞きできます。お楽しみになさってください。
井上(大)先生から伝言です。遠く Deutschland の空の下、Universitaet Heidelberg で学ぶため、最後の追い込みをしています。諸君と同じ空の下、同じ地球上でがんばっています。共にがんばりましょう!…いずれ我が国の哲学界をしょって立つ逸材が、いよいよ本格的に始動しようとしています。
そして小生、末席を汚しまして恐縮です。勉強を教えます。しかしそれだけにとどまらず、率先垂範、一生懸命生きる姿を見せます。「小生以上に生きてみろ!」とは言いません。しかし「同じだけ生きてみろ!」と言います。「誰もできないことをやれ!」とは言いません。「現に、目の前に、やっているおじさんを真似せよ!」と言います。
健康不安と言う爆弾を抱えながらの夏合宿10年目、胃カメラが写した写真に、くりかえし胃液に焼かれ、どす黒く変色した小生の食道が写っていました。服薬・切腹を厭わず、天職を全うするつもりですが、不測の事態が無いともいえません。今年伝えられることを、来年に延ばすわけにはいかないかもしれないのです。小生自身が潔く退路を断ち、夏合宿と言う見果てぬ理想に邁進します。小生の背中に、ついていらっしゃい!
ほぼ1ヶ月後、blogに夏講日記を立ち上げます。注目の題名は『留め置かまし 大和魂』。安政の大獄にて、罪無くして処刑された我が心の師・吉田松陰先生の辞世から取らせていただきました。先生のご尊名に恥じぬよう、がんばりぬく所存であります。
----------
前回からの連載が、今回完結です。もうあと1ヶ月で、今年も夏講ですね。「大和魂」で、やりぬきます。
大阪通信 Vol.61、石川数学塾大阪・学園前教室でも好評配布中です。こちらもご自由にお持ちください。
なお、中入倉庫に大阪通信のバックナンバーが揃っています。今週の 大阪通信 Vol.61も、既に収納してあります。ご覧になってみてください。