青年の視線の先に、柔らかな指先がありました。
指先が不思議な弧を描いていました。じっと凝視していましたら、目が回りそうになりました。
王将で買ってきた焼餃子をつまみながら、同じく王将でテイクアウトしたチューハイをグイグイ飲んでいました。
川面を照らす夕日が、とてつもなく美しくもあり、なんとなく寂しくもあり。
指先に触れてみると、体が斜めに倒れかかりました。長い髪がふわっと顔を覆いました。
『パンの略取』が気に入らないと、いや、クロポトキンそのものがナンセンスだと、再び強く主張し始めたとき…
「ボル(ボルシェビスト)って、かた苦しいわね。意固地で、いつも虚勢張って」。
全人格を否定されたようで、思わず崩れ落ちました。
色恋に不器用な青年と、アナーキズム命な女性が、鴨川の岸辺に寄り添いました。
まだ肌寒い早春の京都、淡い四月の淡い二人が、膝まくらしながら、されながら…。
桜散る淡い季節の、淡い淡い思い出です。