不定期冬講日記(その13)

同志であり同僚であった男が、まだ教育業界にいると知って数年経ちました。

小生は塾屋、彼も塾屋、ただし元塾屋です。彼は現在、某有名中高一貫校の看板教師です。

涙もろい男でした。合否危ない生徒が入試に通ったと言って泣き、生徒が卒業してしまうと言って泣き…なんだかいつも泣いていました。

授業が終わって後片付け、さあ帰ろうとしたら、講師室の奥のロッカーの隅で泣いていました。

「○○先生、どうされたんですか?」と聞きますと、真っ赤に泣きはらした目で、小さな声で、「生徒が…、宿題が…」とポツリポツリ、ボソボソと話し始めました。

「宿題、やってきぃひん生徒がいるんですね。そんなん、私の教室に放り込んでください。宿題の何たるか、わからせたりますわ、はははぁ~!」

「いや…、ちがうんです。…やってきたんです」。

「じゃあ、なんで泣いてはるんですか?」

「うれしくて…。なんぼ叱ってもだめで、授業後に残しても逃げ帰り…。そんな生徒が、心を入れかえて…、もう、うれしくて…」。

繊細な男でした。生徒の気持ちに一番敏感な、すばらしい男でした。

彼もまだまだ、老いぼれるつもりはないと思います。小生も負けずに頑張ります。

石川数学塾大阪
学園前教室・杉浦