年を取ったのでしょうか。最近しばしば、師匠の事を思い出します。
京都大学教育学部で2年間お世話になって、師匠が定年退職されるタイミングで、私が大学院に進みました。
「おい!新入り!このゼミは教育史を研究しとるところじゃ。お前、教育史に興味あんのか?」
学部3回生の時、師匠に初めて声をかけていただきました。とんでもなく天狗野郎だった私は、即答しました。
「興味ありません。」
二の矢が飛んできました。
「政治はどうや?」
「闘いに疲れました。」
「ほ~お、近頃珍しいのう。急ぎでないんなら、しばらくここにおれや。」
「わかりました。お世話になります。」
私が教育史を学び始めるきっかけは、驚くほど偶発的なできごとだったのです。
30年前の、20歳のあの日あの時、あの会話を交わすことがなかったら、きっと私は別の人生を歩んでいたに違いありません。
師匠は私にとって、厳しい学問の師でした。しかしそれ以上に、優しい人生の師でもありました。
(…続く)